小ネタ

とりあえず書きなぐりたくなった衝動のままに。
ジャンルは特になし。オリジナル？っす。
設定、とらえ方は各自おまかせ。
一応、BUMP OF CHICKENの｢ダイヤモンド｣を意識した感じ。

…晩ご飯つくるのがめんどくさいよぉorz

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｢あんた…よくこんなとこまで来たわね｣
カウンターに座っておきながら、彼は何も頼まずただ、
細長い指を組み合わせて 下を向いている。

客は来ない…いや、本来 来るべきところではないこの空間で
いい感じにオバサンになってるあたしに付き合おうってなら、
とことん喋ってやるわよ！
…なんて思ってたけど、空気はそうさせてくれないらしい。

｢どっから来たのよ？｣

首を横に振るだけ。


｢…この店にはね、大概探し物をしてるってヒトが来るのよ…時々だけどね｣

首を縦に振られた。　…聞いている。

｢扉を開く前に、見つけておきたいモノやヒトを探してるならあたしが…



｢色｣


｢…え？｣
彼がようやく喋った。男声にしては高めの声で、今にも消え入りそう。
でも、今言ったものって…



｢なに、あんた画家でもしてたの？｣
｢オレの目には、色がうつらないらしい｣
そう言って顔を上げた彼、は……｢彼｣ではなかったかもしれない。
オトコにしては長めの髪に端整な顔立ちで、
｢彼女｣と見ることもできるかもしれない。
でも、
一人称がオレなら、｢彼｣でもいいや。

緑内障で眼の中央が白くなっているわけでもない。
白内障で黒目が濁っているわけでもない。
……現に、彼は
あたしとしっかり目を合わせている。ピントも合っているに違いない。

｢そういう意味の、悪い…じゃない｣

凝視したあたしの思いを読み取ったのか、彼は目を伏せながらつぶやいた。



｢あなたの顔は分かる。この空間にある物体のカタチも分かる。だけど色はない｣


｢……どういう、意味よ？｣
この後の言葉はあまり聞きたくなかった。
でも好奇心旺盛なオバサン精神が、きっとそうさせたのかもしれない。


｢世界を、自分を否定し続けていたら…いつの間にか消えていた。
 どこに行ったのかは分からない。どこにもいないかもしれないし、
 もしかしたら…すでに｢色｣だけは、扉の向こうにいるかもしれない｣



彼の言ってる｢色｣って…もしかして。
｢そんなに遠くにいるわけでもないんじゃない？｣

｢…え？｣
伏せていた目が再びあたしの方を向いた。


｢あんたの言う｢色｣って、きっと｢こころ｣のことじゃないの？｣
｢……分からない｣
｢あんたの言う世界とやら、自分とやら、それを認めて受け入れなきゃ。
 いくら外を探し回ったって見つかるわけがないでしょーが｣
眉間にシワを寄せながら彼は再び視線を落とした。

｢一つの場所にじっとしていろってことじゃないの。でもね…
 あんた自身の｢こころ｣を見つけないと、｢色｣は戻ってこないと思うの｣
｢こころは、どこに…｣
｢それは、あんた自身じゃないと見つけることはできない。
 あたしが｢そこにあるわよ～｣なんて言っちゃえれば早いかもしれないけど、
 でももしそうだったら…あんたは、あんたじゃなくなっちゃう｣
｢オレは、…オレは…｣
｢無理に取り繕ったり、カッコつけたりしてたとしたら、
 まずはそれをどうにかするとこからね。かっこ悪くて、恥ずかしくて、
 嫌になるくらい…でもそれが自分なんだ、って思えるようになれれば、
 ｢色｣とやらは、戻ってくるんじゃない？｣

…あたしったら、また世話焼きばっかり。
でもお節介だから、あたしは何人ものヒトを｢送り返す｣ことができたって自信もある。






たっぷりの沈黙の後、彼は立ち上がった。

｢…これから、どうするの？｣
｢こころを、さがす。　…時間が、欲しい｣

｢…そう。　それに、まだ若いんだから…扉を開くのは、もっと後でもいいんじゃない？｣

ほんの少しだけ彼は口角を上げ、小さくうなずいた。



｢まだ間に合うから、…早く｢あなた自身｣に戻ってあげなさい｣

入ってきたドアのノブに手を添えて、彼は振り向いた。




｢ありがとう……行ってきます｣


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